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2021年度しなやかエンジニア教育プログラム 『パーソナルカラー』の講義を実施しました
2021.10.12
2021年度しなやかエンジニア教育プログラム 『化粧品の官能評価と感性価値の見える化』の講義を実施しました
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2021.06.28
2021年度しなやかエンジニア教育プログラム 『アンガーマネジメント』の講義を実施しました
2021.06.18
2021年度しなやかエンジニア教育プログラム 『漆と工業はどう関わることができるのか?』の講義を実施しました
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2021.06.18
奈良高専では、新しい価値を持ったモノ・コトを作り出すことができる「豊かな感性・表現力」を備えたエンジニアリーダーの育成を目的とした「しなやかエンジニア教育プログラム」を実施しています。
2021年6月18日(水)に漆作家の染谷聡氏を講師としてお招きし『漆と工業はどう関わることができるのか?』についての講義を3年生の受講生を対象に実施されました。
染谷氏は、伝統的な素材である漆を使った制作活動を精力的に行っておられ、個展開催や芸術祭への出品など、広く国内外で活躍をされておられます。
今回の講義では、最初に「工業と工芸」という一見相容れないように見える二つ関係について説明があり、もともとはすべて工業と呼ばれていたが、後に機械工業と美術工業に枝分かれ、美術工業が工芸と呼ばれるようになったという歴史が示されました。また、漆は木に分類されながら漢字では“木“偏ではなく“さんずい”偏が使われており、木材としてではなく樹液として深く人間かかわってきたことなど、漆に関わるお話しがあり、学生が実際に漆の匂いを嗅いだりして、漆を身近に感じることができました。

(染谷氏の講義の様子)

(講義を聞く学生たちの様子)
その後、江戸時代の「判じ絵」に見る遊びのデザインの紹介や、漆の器の歴史やその装飾の読み方の話があり、染谷氏の作品《ミストレーシング》の紹介として岩手県浄法寺の器の図案を元に、どのように人のイメージが抽象化されるのかを体験するために実際に自分達で絵を描いたり、北海道の熊の模様の器を例に、モノの背景にある物語を紐解いていくことの面白さ、人々の環境や暮らし・生活に合う形で変化した偶然の結果としてのデザインについて教わりました。
また、染谷氏が持参した、「変なものコレクション(昔の人が使っていた道具やアフリカの部族で作られているリュック等)」を学生達に紹介されました。どの道具にもそれを作った人々の環境や文化から生まれた生活の知恵が感じられ、新しい着眼点を教えてくれるようなコレクションに、学生たちは非常に興味深そうに実際に手に取り確認していました。

(染谷氏のコレクションを見る学生)
今回の講義を通して学生たちは、漆作家として作品を制作されている染谷氏のモノづくりの思想に触れ、間違いが許されないとされるエンジニアの世界とは違い工芸においては失敗や不確かさ、その不完全さに価値を見出していくという発想があるということを知り、新たな気づきやこれまでと違った発想の視点を得たようです。最後に、学生から「アイデアに行き詰った時どうするのか?」という質問があり、染谷氏からは、新しい発想を得る方法として「人間は無いものは作れないので、図書館に行って過去の文献を調べる」という予想しなかった回答が返ってきました。これは、エンジニアに通じるものがあると感じた学生も多いのではないかと思います。
なお、本教育プログラムの講義では、学年、学科が異なる4~5名のグループに分かれて持ち回りで振り返りのまとめを行っています。今回は、第1班に講義を振り返ってもらいました。
<学生の講義振り返りまとめ> |
エンジニア、工業の世界では 少しのズレも大きな影響を与えてしまうので 間違ってはいけないけれど、 間違いから生まれるものが面白い発見を起こすこともあると知ることができた。 工業でできるところは工業で、手でできるところは手でやるとより良いものを生み出すことができる。 興味を持ったものはとことん調べる。 工業は江戸時代にでき、工芸は明治時代にできて工業と近い関係にあった。工芸はもともと、国力を諸外国に見せつける為にあった。(万博など) |
今回、染谷聡様には、多大なるご協力頂戴しましたことに感謝申し上げます。有難うございました。